「熱中症」「日射病」「熱射病」の違いは何? 熱中症の予防や、なってしまった時の応急処置について

健康
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暑い日が続いています。関東関西で40度を超えたなど、テレビのニュースで報じられました。また、天気予報などでは、「高気温・高湿度のため熱中症にご注意ください」などという呼びかけが毎日のように行われています。この頃は「熱中症」と言うことが多くなりましたが、そういえば昔、私たちが子どもの頃は「日射病」と言っていたような気がします。「日射病にならないように、帽子を忘れずにね」とか「日射病で具合が悪くなったら、日陰の風通しの良いところで横になって休みなさい」などと言われていました。「熱中症」と「日射病」は別のものなのでしょうか? また、「熱射病」という言葉もあります。それぞれどのように違うのか、または同じものなのか、気になって調べてみました。

熱中症、日射病、熱射病の違い

「熱中症」とは?

日本の夏は高い温度と湿度により、熱中症を発症しやすいのだと言います。

高温かつ多湿な環境にいると体温が上昇しますが、人の身体はとてもよくできていて、発汗や皮膚血管の拡張などにより、上がった体温を下げようとする仕組みが働きます。ところが、そのような環境にいる時間が長くなると、そうした仕組みがうまく働かなくなり、体温が下がりにくくなります。これを「熱性発熱」といいますが、体温の上昇は、時に41~43度という高温に達します。暑い環境下で熱性発熱を起こし、めまい、けいれん、頭痛などの症状(これを暑熱障害と言います。)が現れた状態を、現在は「熱中症」と言っています。昔は発生の原因や症状に応じて「日射病」「熱射病」などさまざまな呼び方をされていましたが、日本救急医学会が統一し、2000年からはすべて「熱中症」と呼ばれるようになりました。「日射病」「熱射病」などの呼び方がなくなった訳ではなく、原因や症状ごとに表現を変えなくて済むように、「暑熱障害による症状」を全般的に「熱中症」と総称するようになったということです。

「日射病」とは?

先の「暑熱障害による症状」のうち、特に強烈な直射日光を浴びることによって起こったものを「日射病」と言います。炎天下にスポーツや激しい労働をしたような時に、体は汗を出すために末梢血管を拡張します。汗を多量にかくと、水分と塩化ナトリウム(塩分)が失われます。その結果血液量が減少し、呼吸は速く浅くなり、心拍数が上がり、ぐったりします。体温はそれほど高くなりませんが、かいた汗のために皮膚はべっとりひんやりした感じになります。日射病を予防するには、帽子や日傘などで直射日光を避けることが重要になります。子どもの頃によく言われた「帽子をかぶりなさい」というのは、実は適切なアドバイスだったわけですね。

「熱射病」とは?

「熱中症」の重症度は、現在次の3つの段階に分けられています。いわゆる「熱射病」は、その中の重症の型を言います。

Ⅰ度:現場での応急処置で対応できる軽症

  • 立ちくらみ(脳への血流が瞬間的に不十分になったことで生じる)
  • 筋肉痛・筋肉の硬直(発汗に伴う塩分の不足で生じるこむら返り)
  • 大量の発汗

Ⅱ度:病院への搬送を必要とする中等症

  • 頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感

Ⅲ度:入院して集中治療の必要性のある重症

  • 意識障害、けいれん、手足の運動障害
  • 高体温(体に触ると暑い。いわゆる熱射病、重度の日射病)

今日付の「毎日新聞」に、次のような記事が掲載されていました。

日本救急医学会は、3段階に分類していた熱中症の重症度を見直し、重症の中でもさらに注意を要する「最重症」を新たに加え、4段階にする方針を8日のオンライン記者会見で示した。今年改定する診療ガイドラインに盛り込む。熱中症による救急搬送者数が増加する中、死に至る最重症の熱中症を見極め、救命につなげる狙いがある。

 熱中症の重症度はこれまで、めまいや大量の汗、筋肉痛などがある軽症(I度)、頭痛や嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感などがある中等症(Ⅱ度)、意識障害やけいれん発作などの重症(Ⅲ度)に分類されてきた。

救急医学会によると、同学会の過去の調査や各国の分類を調べた結果、重症のⅢ度の中でも、深部体温が40度以上で意思疎通ができない「最重症」では、他の重症患者より死亡率が高かった。

 表面体温が40度以上で重い意識障害がある患者でも深部体温の測定が行われない事例が多く、身体冷却の実施率は63・9%にとどまり、院内死亡率は37%と高かった。救急医学会は「質の高い冷却には講習や訓練が必要で、不安のある施設は学会に相談してほしい」としている。

 また救急医学会は全国で猛暑となっていることから、「熱中症は既に超災害級の被害をもたらしている。暑さに慣れていない今が最も危険で、不要不急の外出は控えてほしい」と呼びかけた。【寺町六花】

引用元:https://mainichi.jp/articles/20240708/k00/00m/040/197000c

「日射病」「熱射病」が、それぞれ「熱中症」という大きな枠の中に入るということがわかりました。

熱中症について正しく理解し、予防しよう

熱中症はどんなところで起きる?

熱中症といえば、炎天下に長時間いた、真夏の暑い日差しの下激しい運動や労働をしていたといったケースがイメージされるかもしれません。しかし、実際はこうした典型的な場面ばかりではありません。梅雨の合間に突然気温が上がった時など、身体がまだ暑さに慣れていない時期にもかかることがあります。

次のような環境には注意が必要です。

  • 高気温、高湿度
  • 風が弱い、日差しが強い
  • 照り返しが強い
  • 急に気温が上がって暑くなった

概ね想像通りだと思いますが、気温が低くても、湿度が高いところでは熱中症を発症しやすいです。

また、直射日光を避けて屋内にいても、高室温、高湿度といった条件がそろうと、熱中症にかかりやすくなります。特に最近では、このような室内型ともいえる熱中症で救急搬送されるケースも増えてきています。

熱中症を予防するには?

熱中症予防のためには、次のようなことに気をつけます。

暑さを(できるだけ)避けましょう

……暑いものは暑いのですが。

外出している時は、なるべく日陰を歩きましょう。昔から言われてきたように、帽子や日傘を使うのも効果的です。

屋内では、ブラインドやすだれなどで直射日光を遮りましょう。屋内でも、高温で湿度も高い、風がないなどの原因で、熱中症にかかる危険があります。エアコンで室温・湿度を調節し、扇風機で風を送りましょう。

服装を工夫しましょう

最近はクールビズなどが浸透しつつあるようで、昔ほどではありませんが、今でも時々首元までネクタイをきちんと締め、日差しの下を歩いている男性を見かけることがあります。「ご苦労さま」としか言いようがありませんが、そうした方に限って濃色のスーツで、ドレスシャツは長袖です。実は私の亡父がそのタイプだったのですが、彼には「ワイシャツは白の長袖がビジネスマナーである」という頑ななまでの思い込みがありました。マナー講師に一度尋ねてみたいものですが、そもそもスーツ(背広)着用の風習はおそらくヨーロッパで発展したもので、夏の日本のような高温多湿の環境には適さないのではないでしょうか。

涼しい服装を心がけましょう。外からの熱の吸収を抑えるためには、濃色の服装は避けた方が良いでしょう。白やベージュなど薄い色のものを。素材は、通気性の高い綿や麻などがオススメです。

薄着の方が涼しいのは確かですが、下着を身につけた方が、肌と下着や上着の間に空気の層ができ、外からの熱を遮断します。また、何も着ないというのは、実はあまり涼しくないような気がします。

水分補給を忘れずに

暑い日には汗をかき、体内の水分が失われます。のどの渇きを感じる前からこまめに水分を補給しましょう。また、汗をかくと、水分と一緒に体内のミネラルやビタミンも失われます。水分と合わせて、これらも補給するように気をつけましょう。

スポーツ飲料は水分とミネラルを同時に補給できるので便利ですが、糖分の多さには注意が必要です。

一方経口補水液は塩分濃度がやや高いため、血圧の高い人は注意した方が良いでしょう。

熱中症発症が疑われる時には?

高温・高湿度の環境下で、立ちくらみ、筋肉のひきつり、倦怠感、けいれんなどの症状が現れた時は、熱中症の発症を疑いましょう。体温の上昇や頭痛、めまい、吐き気などがある場合は速やかに応急処置を行う必要があります。また、意識障害が認められる場合には、すぐに救急車を呼び、専門の医療担当者の手に委ねましょう。

正しく応急処置を行いましょう

少なくとも意識がある倍には、次の処置を行います。

涼しい場所に移す

風通しの良い日陰や、クーラーが効いている室内に移動させます。

冷却

衣類を脱がせ、体内の熱を放出させます。皮膚に水をかけ、うちわや扇風機などで風を送ったり、氷嚢や冷却シートなどで首やわきの下、太ももの付け根など、太い血管の走っている箇所を冷やします。

水分と塩分の補給

スポーツ飲料や経口補水液などを摂取させます。意識障害を起こしている場合は誤嚥の危険があります。自力で水分を摂れない状況の時は、無理に飲ませないようにしてください。

まとめ

先日、室内で夜間、しかもエアコンが稼働していたにもかかわらず、熱中症と思われる症状に見舞われました。幸いなことにごく軽度で、頭痛や吐き気などはあったものの、意識ははっきりしており、ふだん服用している鎮痛解熱剤をのみ、冷蔵庫に残っていた冷却シートの最後の二枚を首回りに貼ることで対処しました。(明日は冷却シートを買い足さなければいけないな……)と思いながら1時間ほど横たわっているうちに大分回復したので、良かったです。屋内でも熱中症になることは、以前から知っていましたが、エアコンが室温を調節していたはずなのに、何が原因となったのだろう? と思ったことが、今回調査を思い立った理由です。熱中症にはいろいろな原因があり、高温だけでなく、湿度の高さ、風のあるなしや、体調なども関係があるのだということがわかりました。

夏はまだ続きます。8月に秋が立ったとしても、その後しばらくは残暑が続くでしょう。熱中症の症状の現れ方は一様ではありません。熱中症にならないような備えももちろん重要ですが、発症してしまった時、できるだけ早く、適切な処置をとれるようになりたいと思います。

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